近況:本業やや忙しく、ゲームが1日0時間気味。

PS3:ヒマラヤから来た《ラストガイ》が浅草でゾンビ走り虫を避ける

コーヒーとメガネが置かれたテーブルにゲームのコントローラーがある|Photo by Sabri Tuzcu (instagram.com/saber.shot)

「なんか、よくわからんけど、超すごいもんを見つけてしまった…」が、第一印象だ。
正直、困惑した。
プレイステーションストアで配信されていた謎の大行列アクションゲーム『The Last Guy』は、Hindustan Electronicsというヒマラヤのゲーム会社がリリースした…とされる名盤。

「ヒマラヤのゲーム会社がリリースして必死に日本向けにローカライズした結果が観光地・浅草だった」みたいな情報量で遊ぶほうが面白いと思います。私もそう思って遊んでた時が一番楽しかったので(笑)いろいろ分かった後も面白いゲームですけどね。

ゲームを起動させた時の、「ダァ〜…ラ〜……ースト…ガァ〜…ィ……」というタイトルコールだけでも、なんかもう、只者じゃない感じがする。正気の沙汰ではない感じがする。なんだこれは…。Googleマップの上で遊んでいるようなグラフィック。浅草という舞台。アサヒビールの炎のオブジェ。(隅田川の金のやつ。)墨田区役所や浅草寺、花やしきまでステージになってる…。避難場所は隅田公園と伝法院(浅草寺の大きな草鞋と仁王様の門の近くの本坊)のあたり、という妙なリアルさ。中華街ステージ…。みなとみらいステージ…。名古屋ステージ…。ゾンビが出る町の生存者をビルから回収して、大行列を誘導。「ゾンビ走り虫」「ストーカーゾンビ」「凡ゾンビ」という雑なネーミング。

横浜・浅草・ロンドン・ロスなどをヒマラヤから来たなんかすごい男・ラストガイがゾンビと…バトルせず、避難住民の大行列を安全地帯に導いて脱出させる穏便なゾンビゲームであるからして、バイオハザードやデッドライジングな感じのゲームをやりたい場合は、バイオハザードやデッドライジングをお買い求めください。

「なんでヒマラヤから来たラストガイに浅草を救われるんだろう!?」みたいな心の動きを無視し、気持ちを置き去りにしたままゾンビ走り虫(敵)に追われて、「よくわからないけどとにかくこのありえないほどの大行列をなんとかしなきゃ」って状況に翻弄され続ける。(翌年、皮肉なことに東日本大震災の都心を見て「ラストガイの行列って案外“ありえないほど”じゃなくて危機的状況の東京で普通に現れる人の群れだったのか」って思うんだけども。都会で人が溢れ出るとあのくらいの感じになるんだな…。)
ちなみに浅草と横浜の土地勘があるとやや有利。

PS Storeで配信されていた体験版をやったら変な中毒になってしまって、2500円も出して購入。きっとそのうちセールとかあるんだろうけど…今やりたい…。
どこをとっても只者じゃない感じがして、「やらねば…」という気持ちになる。なんだかよくわからないが、私もこれまでゲームを楽しんだ身として、なんらかの通過儀礼として、本当にゲームを愛せるかの自問として、どこまで広い心で遊べるかという洗礼として、「やらねば…」という気持ちになる。
ゲーム性は先述の通り、生存者をビルから回収してありえない大行列を誘導して避難場所につれていくだけ、という単純なものなのだけれども、気の利いた必殺技などは特になく、その不親切さと言ったら。
昨今の整ったゲームバランスに慣れていたせいで面食らったし、あまりにもクリアできなくてイライラしてくることまである。
ハマるな〜。

開発者(とされる)インタビュー動画の冒頭ではヒマラヤ付近(ネパールとブータンと接触する面積が多いあたり)がクローズアップされていたけど、喋っている人たちはネパール語ではなくてインド側の何らかの言葉(メジャーなヒンディー語でいいのかな…?)だったので、日本で働いている人とか起用したのかな。
ある種のレイシズムを孕む感覚だと思うからあまり茶化した文脈で使いたくはないけれど、これ(多分、多くの日本人が)ヒマラヤ地方を囲むネパールやインドを「(先進国である日本に出稼ぎに来る人がたくさんいるような)遅れている国」と思っている部分があったから、「ヒマラヤ地方に設立されたゲーム会社」という表に出た情報のおかげでこの不親切さを楽しめた・許せた人も居たんじゃないかな〜…と邪推した。「後進国のゲーム会社が浅草や横浜を知ってて、めちゃくちゃなネーミングとコンセプトで先進的なPS3市場に進出してきたみたいだから生暖かく見守ってあげよう」みたいな楽しみ方というか。たとえばカプコンやセガがこれで2,500円取ったとしたら、本当に今『The Last Guy』を面白がって笑っている人の10割が笑顔のまま同じ熱意でこれを楽しめたかな?って。300円なら笑ったけど、2,500円だったらどうなんだろう。

ゲーム自体は、超ライトゲーマー(マリオ、マリオカート、勝敗を気にしないボンバーマンあたり)がやると可愛くなさと不親切さにひっくり返るかもわからないので、手放しでオススメとかは絶対できないんですけど、ファミコン時代に『たけしの挑戦状』のめちゃくちゃな感じに耐えられた人や、『ゼビウス』や『フォーメーションZ』や『チャレンジャー』の単調な感じに飽きなかった人、『クルクルランド』をやっているうちに「私一体何をしてるんだ」という真っ当な自問をせずに遊びきった人、『ロードランナー』的な回避を考えるのが好きな人はきっと楽しめると思います。


今はPlayStationNow for PCのサービスを介してWindowsパソコンで、PlayStationNowによってPS4でも遊べるとのこと。(2018年5月現在)