近況:本業やや忙しく、ゲームが1日0時間気味。

ケンカしたら負け!人格者専用料理ゲーム《OverCooked》

揚げ物に失敗してキッチンを大火事にしてしまった(オーバークック)

わたし(管理人)

本記事は他のゲーム系メディア向けに草稿を代筆したものをメディア閉鎖に伴って権利ごと買い戻し、自サイト用に加筆修正したものです。

先に結論を書きますが、ここのところで最高のパーティーゲームはOverCookedですし、ガチでストイックなソロゲームもOverCookedです。
単純で可愛いのに、超絶恐ろしいゲームを見つけてしまった。

イギリスのゲームメーカーTeam17がNintendoSwitch向けに(も?)リリースしたオーバークック スペシャルエディション…このゲーム、人間的な成長が必要である。

まったくもって全然動画みたいにうまくできない。
揚げ物に失敗してキッチンを大火事にしてしまった(オーバークック)
揚げ物に失敗して大炎上した、彼女と私のレストラン。私たちは互いに一人前の社会人同士として信頼し合い付き合ってきたはずだが、フタを開けたらフィッシュアンドチップスひとつ満足に作れないままときどき険悪になって流氷の下に落ちていくだけのちっぽけな地上の星だった。

見た目が可愛いからといってナメてはいけない。一人でやってもちゃんとキツイ。どのくらいのキツさを感じたかと言うと、ステージの難易度が上がってからのOverCookedをソロで美しくクリアするのと比べたら、正直、テントのマップでクシャルダオラとミラルーツとウカムルバスとアルバトリオンと100匹のイーオスに囲まれながらランゴスタに刺されてビリビリ〜ってなった状態でスタートするモンスターハンターのほうが若干の秩序が残っているし、まだ勝機を見つけやすいのでは?って感じのキツさ。
操作方法(オーバークック)
操作説明はロード画面でなんとなく表示される。スティックで移動・上ボタンで下ごしらえ(お肉をたたくとか野菜を切るとか)・右ボタンで食材を持つ(または置く)、ということなんだけど無言の操作説明なので見逃したり勘違いしたりするといきなり実践でパニックになる。
レシピもゲーム開始の直前になんとなくパッと表示されるだけなので、よそ見をしていると自分の仕事がなんなのか理解できないまま勤務開始となる。
スープのレシピ(オーバークック)
(玉ねぎ3個必要だよ→切ってね→鍋で煮てね→盛り付けしてね、という意味。)

序盤は穏やかに楽しいパズルゲームって感じなんだけど、中盤以降は狂った速さで落ちてくるぷよぷよやテトリスに複雑な思考が加わる感じ。一般の車が走ってる市街地でF1やったらこういう感じかな?って。

既にスイッチを持っている人は四の五の言わずに、早くダウンロードしてもらいたい。輸入パッケージ版は相場通りだけど、ダウンロード版はニンテンドーショップのオフィシャル価格でも2千円台。Amazonや楽天での実勢価格は千円台になっていることも。
ちょっといいハンバーガー4個分の値段であなたは半永久的に苦行のような調理体験を手にいれることでしょう…。

調理場は無秩序の極みで、料理をしていたら突然地割れが起きて当店が真っ二つになったときはこんな無慈悲な人生があるかと思った。地割れ中は火消しにも行けないし、焼いていたお肉とかはもちろん焦げてダメになります。つらい。
無慈悲にも地割れするレストラン(オーバークック)

とにかく思い通りに事が運ばない。具材を運んで下ごしらえをして火にかけたり盛り付けたりを、各動作ボタン1つで行うだけの超シンプルな作りなのに、思い通りにならない。「今の子供はなんでも思い通りになるゲームばっかりやっているから忍耐力がない」とかいう教育の有識者(笑笑笑笑笑笑)には是非オーバークックをやってみて欲しい。持論が倒壊して発狂するのではないか。一体なんの情報をもとにして「ゲームはなんでも思い通りになる」と言っているのか知らないが、オーバークックは、思い通りにならない山の巓(いただき)に続く絶壁という感じ。無理。きびしい。落ちちゃう。

ソロでやるととにかく料理が思い通りにならなくてキツイ。ならば誰かに手伝ってもらおうと複数名で挑戦すると、今度は一緒にやっている人が思い通りにならなくてキツイ。もちろん料理も引き続き思い通りにならない。場合によっては一人でやった時よりひどい結果になる。
必死に調理するも志半ばでタイムアップ(オーバークック)
「助けてくれる人がいるっていいな」とだけ思っていられたのは最初の5分くらいで、ゲームが進み難易度が上がるにつれ「どけぇー!邪魔だー!」「ほら早くしろ!なにやってんだ!」という負と苛立ちのオーラが全員から立ち込める。「あんたの作業が遅いからこんなことになるんじゃないか」「今失敗したのは私のせいじゃないんで」「これだから計画スキルの低い人は…」「いやそっちの持ち場の理屈はこうかもしれないけど、実際にこっちの現場をやってみれば分かるけど、そっちの理屈通用しないからね」「そうは言うけどあなたがやってる作業って単純でしょ?こっちはこれとこれを両立させるから失敗リスクが高いの」と、みんなきっと腹の底で思っているだろう。いるはず。いるだろ!?思ってたんだろそうやって!思ってたに決まってる!!!…と断定したくなるほどギスギスした空気を全員が滲ませないように耐えている気がする。おそろしい。
ステージが進むと難易度が上がるから、だんだんお互いのミスに敏感になってくるんですよね。成功させようと思って「もっとこうしたほうがいい」を言うんですが、相手は相手の持ち場の事情があってそれには応じられない。友人も彼女も私も、お互いの持ち場の事情をぶつけあって、何度もトゲッ…としました(笑)私たちが聞き分けの悪いタイプの幼児だったら泣きながら髪でも引っ張り合った気がするわ…。

上司として部下を束ねる必要が出てきた人は、変なビジネス啓発本なんか読まずに部下とこのゲームをやってみて、腹を割ったミーティングをすればいいと思う。部下が何を望み、上司がどうあるべきかが分かる。自分が人に指示する立場になった時、何に苛立ち、自分が人に指示される側に立った時、何に理不尽を感じるのか…。

ソロもソロで、「同じシフトだったキッチンスタッフがイキナリ全員休んだまま通常営業を始めるレストラン」みたいな趣のあるパニックゲームですが、誰かとやるならば一旦は心頭滅却した上で、共闘するすべての者への優しく広大な心と忍耐力、そして諦めないポジティブな意識を持たなければならない、人格を試されるゲームです…。

パーティーゲームとしても大盛り上がり間違いなしのポテンシャルはあるものの、「誰とやるか」は重要で、のめり込むと「イラッ」とする瞬間が生じる可能性が高い分、ゲームでムキになって、ムキになったままになるタイプの人(マリオカートでボロ負けした後、ほんとに変な空気になるような人…)とは絶対にやらないほうがいいです。瞬間的に「ああ!もう!」みたいになっても、ゲームが終わったらちゃんと冷却できる人となら楽しめます。ちょっとトゲのあること(「もっとこうしてよ!」みたいな)を言っちゃったとしても「ごめんね、ムキになっちゃった(笑)」って明るく謝り合える人となら安心。でも、ゲームの勝敗を本気で引きずったり、モンハンで誰かがちょっとでもエラーをすると本気で「俺の考えた戦略と俺の知っている方法が一番正しい!」と言わんばかりに御指導御鞭撻せずにはいられない人とかと遊ぶのはオススメしません。あと、どんどんタスクが複雑化していくので、作戦をまったく話し合わず「当たって砕けろ!」でトライして、当たるたびに砕け続けて、砕けたまままた当たりに行く性分の人と攻略するのは現実的に難しいかもしれないですね(笑)

ジャンル
ストラテジー / パーティー / コミュニケーション / シミュレーション
任天堂|Nintendo Switch Overcooked® – オーバークック スペシャルエディション

任天堂のソフト紹介ページには上記のように書いてあります。strategy(作戦・戦略)って軍事的文脈でも出てくるし物々しさを感じる言葉ですが、オーバークックは完全にこれですね…。そして、ストラテジー以上に見逃せないのが「コミュニケーション」と明記されていることです(笑)そう、これはシミュレーションである前に、名実ともにコミュニケーションを試されるゲームなのです。
協力的にやれば煩雑な作業も乗り越えられる?!(オーバークック)

ちょっと冷やかし気味にも書いてしまいましたが、純粋にいいゲームだと思います。空気がピリッとしたあとに「ムキになっちゃってごめんね」って素直に謝り合うわけです。大の大人が、“たかがゲーム”で。ゲームなんて日常の些細なことです。もしかしたら気に留める必要すらないことかもしれませんが、そういうちょっとした遊びで起きたことも取りこぼさずに謝ったり、相手がいい仕事をしてくれた時は「今の助かったよ、ありがとう」っていうのは大事だなーって思いました。持ち場を交代してみて「こんな大変なことがあるとも知らずにさっきは無茶な指示ばかり出してごめん」って、自分の浅慮を認めたり。相手のことを考えて自分の非を認める、暮らしの上で必要なマネージメントもシミュレーションできるって、よくできてるゲームだな〜と関心しました。
そんなわけで集団でやる場合は、コミュニケーションが上手いチームが好成績を出せると思います。
(なんて書きつつ、複数人でやると結構疲れるから私は黙々と一人でやってるんですけど。ソロだと完全にストラテジーに振ったゲームです。)

1ゲーム5分以内で終わるものなので、空き時間を活用して小刻みに遊べるところも、バランス感覚のいいゲームです。日本ではダウンロード版が主なので(パッケージは多分、輸入版だけ?)ソフトを差し替えなくてもすぐ遊び始められますし、携帯機としても遊べるスイッチと親和性の高い作りですね。本命ゲームの息抜きや通勤のお供にも最適だと思います。いや、息は抜けないですし、出勤前にやり込んだら今日の分の集中力なくなっちゃうかもしれませんが。指先のコントロール・冷静さ・判断力・ノーミスのコマンド入力・平常心などなど欠かせないので、準備運動というかトレーニング的にも良質です

ところで本当に意味わからないと思うんですが、オーバークックの壮大なオープニングは無闇にベヨネッタの重めの曲がかかるほうのムービーシーンみたいでした。

あと移動に使うバスがかわいいです。
マップを移動するかわいらしいバス(オーバークック)