Winning Post…ダービースタリオン…ファミリージョッキー…サラブレッドブリーダー…。…数ある競馬ゲームを未経験のまま、初めて手にしたのは、コチラ。
カイロソフトの『G1牧場ステークス』です。
愛らしさと裏腹な本格ファンファーレ
デフォルメされた絵で見る分には、ニンジン追い掛けてる馬って本当に可愛いな…。(現実で見ると複雑な気持ちになるけど…。)
ロード画面、これです。可愛い…。

可愛い作風なので、そんなに競馬の臨場感みたいなものは求めていなかったんですが、ローディングを終えてスタート画面に辿り着いた瞬間、轟いたファンファーレで、びっくりしてしまいました。
この可愛さにマッチするギリギリのラインでちゃんと荘厳なファンファーレが…!!!

芝を馬が蹴ったディティール…美術面も相変わらず素晴らしいです…。
さて、競馬のファンファーレと言えば(…特定の属性にある子供たちの自殺率の高さについて笑っていたネット番組について感じたことは相変わらず番組映像を見た日と同じ重さのまま心に痞えているんですが、ここではゲームの話がしたいので、話そうとしているゲームの話をそのまま話します…)ドラゴンクエストシリーズの作曲家が手掛けた中央競馬 東京・中山のファンファーレ、聴いたことのある方も多いんじゃないでしょうか。
競馬に対しては“ギャンブル”のイメージが強かったので、初めて聴いた時は「え!?競馬ってギャンブルなのに音楽めちゃくちゃ荘厳ですごいな?!」ってびっくりしたものです…。
あれは多くのゲーマーさんと親和性の高い競馬ファンファーレだろうなと思うんですが、このカイロソフトさんの『G1牧場ステークス』のファンファーレも、カイロソフト作品の世界観に於いては完全にあのファンファーレと同じ位置にあるわけで、それが「設定上そう」っていうだけじゃなくて、クオリティとして説得力をもって仕上がってて、すげー!と思いました。
かっこいいのに可愛い世界観を壊さないって、本当に本当に質の高いお仕事だと思います。
馬は買い付けから
競馬モノですから、ジャンルの時点である程度ふるいにかけられる(少なくとも競馬に無関心だったりギャンブルとしての悪印象が強かったり、動物に対する福祉的観点で一切許容できない立ち位置から初めてカイロソフトのゲームを選ぶなら、このタイトルは選ばないだろう)と思うのでプッシュせず概要を流すだけにしようと思います。

ゲームスタート時、ファームに馬は居ません。訓練場を作る準備も並行しつつ、まずは購入から、というのがスタート地点です。

初期の選択肢は〈ドサンコ系〉か〈シャトー系〉の二択。今のところパラメーターも含めてどんな特性か分かりやすいですが、このあと〈グラサン系〉とか、語感からして「なんなんだこの馬は?」ってなる感じの、カイロソフト性が高まった設定も増えてきます。
とは言え、これまで私がプレイしたカイロソフトのタイトルと比べると、(この世界観を保てる解像度の範囲では)カナリの高解像度でシミュレートしているような気がしますが…。
お寿司とかは、寿司コンテストで生ビールが勝ったりしてましたが、今作では競馬でキリンが出てきて勝つみたいなことはありませんでした。
再現性を求めたい方向で競馬好きなクリエイターさんが手掛けたんでしょうか。個人的には好きなバランスです。はちゃめちゃなのは別のタイトルで味わえるので(笑)
厩舎に迎えたら競走馬との生活がスタート

厩舎に新馬がやってきました。〈アオボーイ〉というのは予め割り振られている名前ですが、もちろん変更可能です。
日々の調教と牧場の施設
調教用の施設が完成すると騎手が毎日面倒を見てくれます。
内容はリアリティ高めのものもあれば、主に瞬発力をアップする〈忍者マスター〉や、器用さ重視の〈折り紙マスター〉など「いかにもカイロソフト!!」と笑ってしまうメニューまで様々。

初期は小ぶりなウォーキングコースがあるのみですがゲームを進めるにつれ、芝・ダート・スラローム・プール・坂路が増え、休養のための湯治場や放牧地も使えるようになります。
厩舎の隣の青い屋根は騎手の暮らしている宿舎。完全個室で一人一棟です。朝になるとここから出てきた騎手が担当の馬を引いていき、日が暮れると馬を厩舎に戻して自分たちもここへ帰っていきます。
資金源としては牧場内に観光客向けの施設(記念館・展望台・ソフトクリーム屋さんなど)も作れるようになるので、ここで他作と通じる箱庭経営感もちょっと愉しむことができます!
嬉しい!
リアリティあふれるレース

芝600の新馬戦は〈埼玉競馬場〉で。これでデビューして、勝てば500万条件へ。負ければ未勝利戦です。

実況解説は「お馬さん」という言い回しにカイロソフト性が滲みますが、基本的にはリアルに仕上がっている印象で、そのまま実況アナウンサーさん風の読み上げをすればカナリ本物っぽく聞こえます。
この「さあ、本馬場入場です」なんて、想像上の音声でも再生しやすすぎるでしょう…。
アナウンサーのセリフが入るのはゲートインまでなので、レース中の実況はありませんが、自分の脳内で勝手に実況が入るので無問題です。

レース、静止画だと分かりにくいですが、結構すごい動きなんです。
直線や逃げの疾走感も(馬のスタミナが切れない限りは)ちゃんと出てきますし、最後、押し切る・押し切られる時の圧迫感や、馬群が縮んだ窮屈さもしっかり演出されます。差し馬がグングン来る時の加速感もリアル。
ドット絵とデフォルメされた世界観の中でこれだけ再現できるなんて、クオリティへの誠実な執念を感じずにはいられません…。
でもちゃんとカイロソフトっぽいままなのがまた凄いんですよね。

馬がバテると騎手が汗かくので、(馬には本当に申し訳ないんだけど)この様子が可愛くて、…これを見ると「あ、カイロソフトのゲームやってる」ってなります(笑)
引退と死
…あとですね、引退後の馬も引き続き(自分が管理している牧場とは別の場所にいるので、システム上もう動いている姿を見ることはないですが)面倒を見ることができます。
ただ、それでも、ある程度の年齢を重ねると亡くなってしまいます。当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、とは言ってもカイロソフトの作風だし、このあたりの描写をどうするのかなと思ってたんです。もしかして、なんか、馬の神様が来て「異世界につれてくことにしました。そこで永遠の命を」みたいな、なにかあるのかな?と思いながらプレイしていたら、突然に訃報が入りました。
そういうところも含めて、カイロソフトらしいゲームでありながら、お寿司屋さんや食堂の経営シミュレーションとは異色の遊び心地でした。